《……四角…。》
娘の卒業式での、私の写真の感想。
親も一緒に、体育館にズラーッと並んで
クラスごとに全員集合で撮影。
《子供だけじゃないのかよ…嘘でしょ…》
そう思いながら並んだ記憶。
「お母さん方は前の方に~!お父さんは後ろで!」
写真を撮る人が皆に向かって大声で指示。
《嫌だわ…ただでさえ横に誰か来るの嫌なのに…》
一番前が子供たち、その後ろに母親、
そして一番後ろに父親たち。
《前、横、後ろに人・人・人……ムリムリ!!…》
そう考えてるうちに、どんどん並び終える。
もう後ろしか空いてない。
「まだの方は後ろの方に~!!」
《よっしゃ…一番後ろならまだいいや…》
いそいそと、後ろにまわる。
一番前の子供たちは椅子に座り、その後ろに台、
体育館の舞台上にまた台を置いて…
という配置だった。
《後ろの一番端っこがいいなぁ…》
そう思っていたが、誰かのお父さん。
もう取られていた。
『すいません…』こそこそと、隣に。
私、そのとき100キロ近く体重がありまして。
誰かの父の “おおっ…” という顔。
いまでも鮮明に覚えてる。
《ごめんなさいね…でっかくて……》
「では台に乗ってくださ~い!!
マスクをしてる方は取ってくださ~い」
声と同時に台に乗る。
丈夫そうな、スチールの長い台。
ミューーーーン!…キキィーー…ッ
響き渡る、軋む音。
皆が周りを見渡す。
――私だ。
だが、私も皆に合わせて “何?どしたの?” と
キョロキョロする。
滑稽。
お隣の誰かの父は、確実に私と気付いてる。
…恥ずかしかった。
そして、時間が押してるということで
騒ぎは収まった。
「では…撮りまーす!…あっ、もう少しそこ、寄ってくださーい」
どこかに指示してる。
《早くしてよ…》
隣に誰かの父、そしてまた反対側には誰かの母。
詰めないと入らないので、肩がくっついてる。
…自分の汗臭さや圧、色々気になる。
とにかく、耐えられない。
「ハイッ!チーズ!!」
……終わった。
トータル5分ぐらい。長かった――。
後日、娘が写真を持って帰ってきた。
「ママ…見て…(笑)」
んー?と、見てみる。
《あ!娘…いたいた!…あー、さすが。やっぱ可愛いわ。えーと…私は………えっ…。》
デカイ。デッカイ。とにかく、デカイ。
そして…
緊張してたからか、肩がギューンッと上がってる。
《……四角…。》
まるで、黒いスーツを着せた冷蔵庫に
ポンッと顔を乗せたみたいな仕上がり。
私も、誰かの “父枠” のよう。母じゃない。
デカすぎる。
『ねぇ…これ……』
だんだん笑えてきた。
娘と指をさしながら、大爆笑。
というか、私が一人で笑ってる。
『ねぇw見て、見ww見て!!ちょっ…四角っw…』
笑う私を見て、娘は笑いが止まらない。
二人して…息が出来なかった。
『……はあぁーーーっっ…いい写真だね!!』
やっと喋れた。
今でも、あの写真を思い出すと…
恥ずかしいやら胸が苦しいやら…
なんとも言えない気持ちになる。
また、いま食器を洗いながら思い出してしまった。
《あー……もう、五年も前か……》
早すぎる時の流れと、娘と私の成長。
色褪せない、あの時の熱く耳まで
“ジワッ” とくる感じ。
言葉にならない感情が、一気に押し寄せた。
《またここから五年後……何してるかなぁ…》
細く出しっぱなしの冷たい水と、
泡だらけのゴム手袋を見つめ
……胸がギューっとなった。


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