頭がぽわーっとして…なんでもできる。
人目なんて気にならない。
《ほんっとサイコー…これさえあれば余裕で生きていけるじゃん…》
20年前から、アルコールは生活の一部だった。
基本は引きこもり。
ベッドに座って窓の外を眺める。
「あんた…また飲んだねー!学校辞めたんだから働くか何かしなさい!!」
母の怒号が飛んでくる。
《うるせー…》
母が向こうに行った隙に、更に酒量を増やす。
《よしっ!化粧して出るか…》
派手なメイク、ピタッと可愛い服を着て
香水を振り掛ける。
「どこに行くのね!?こんな時間に!」
《てめーが何かしろって言ったんだろ》
黙って家を出る。
夜の繁華街。
《賑やか…キラキラしてる…サイコー…。》
やっと呼吸ができた。
酔ったまま歩いていると
『働いてみない?体験だけでも』声を掛けられる。
「あ…こんなんですけど…ドレス入りますか?」
サーッと上から下まで視線を走らせた。
『イケるイケる!全然!問題ない!!』
《テンション高…》と思いながら着いていく。
オジサンは優しい人が多かった。
飲ませてくれる。お小遣いもくれる。
初めての経験ばかりで、すごく楽しかった。
《酒飲めてお金もらえるなんて…》
しばらくは天国だった。
こんな世界にも当然、合わない人は居て…
危ない気がした。なんとなく。
酔ってないとき店長に
「私、○さんに変なことするかもしれません。
クビにして下さい。お願いします」
と懇願し、晴れてまた無職に。
あの時の様子、母が言うには
“あんた毎日イライラしてて、すんごく目つきが怖かった。見たことないぐらい” と。
なんやかんやで、トラブルを自分で防いでたらしい。
―今でも思い出す。戻りたい…またあの感覚……
考えてるだけで、ぽわーっとしてくる。
感覚が戻ってくる。
戻るつもりはない。
今の方が、私にとっては充実してるから。
朝早く起きて、娘のお弁当つくって。
猫とお喋りしながら身支度する。
「いってらっしゃい!気をつけてね」
娘を見送り、家事と作業をする。
…こんなサイコーな毎日、絶対手放さない。
今日も、思い出すだけ。
ぽわーっと、あの頃の私が憑依する……
《OK、ありがとう。戻るわ》
心の中で言ったら終わり。
今日も日々を、こなしていく。


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