桜と奇声と

「うおおぉぉお~~~~!!!開けろ~~!!」

ドスッ!ガーンッガンッ…ドーーン!!

『あらっ!何してるの!?誰か来てーー!!』

精神科に入院してたとき。

ほぼ毎日、こんな感じだった。

屋内なのに轟音が響き渡る。

誰かが叫んでる。

大人がワンワン泣きながら廊下を走ってる…。

最初は怖かった。

絶対に、外では見ない光景だから。

でもそのうち慣れてくる。慣れって凄いな…。

窓から見える外は、穏やかな陽気。

雲一つない真っ青な空に、桜の花びらが舞っている。

まるで……別世界。

「開けろ~」と叫んでるのは、隔離室に入れられてる人。

入院してすぐは、皆 “隔離室” に入れられる。

カメラがあり、トイレも常時監視されている。

興奮状態の人も多いため、

毎日お尻に筋肉注射を打たれる。

嫌だったなぁ…。相手が女性の看護師さんと言えど…お尻出したくなかった(笑)

約5日間をここで過ごし、大部屋へ。

「俺は選ばれた人間。ここに居るのも勉強の為だ。」

「この腐った世の中を変える為に俺が~…」

ユニークな人だった。

昨日まで、隔離室で叫んでた彼。

無事、大部屋に移動できたよう。

看護師さんが、彼が喋ってる横で私に向かい

『○君は黙っとれば、よか顔しちょるのにね』

『今日も元気に演説中ね?』と。

もう…笑いをこらえるのに必死だった。

だって、笑ったら何かされるかもしれないから…(笑)

そんなやり取りの最中も、彼は一人で誰も居ない方を見ながら、勝ち誇った顔で話し続けていた。

またある日は。

『何してるの!?誰か来てーー!!』

女性の看護師さん。

どうやら、廊下で誰かが殴られたらしい。

私も見に行くと、驚いた顔で尻もちをついた男性と

拳をグーにしたまま突っ立ってる男性。

『なんでそんなことをするのっ!?』

男性の拳を押さえながら諭す女性看護師。

《すごい…怖くないのかな…》と思いながら、眺めていた。

私たちギャラリーは【…戻ろう】と、各々解散。

またまたある日は。

「うわあああぁ~~ん!!」と、演技みたいに泣き叫びながら廊下を走る女性。

どうやら、入院中の男性と痴話喧嘩したらしい。

《皆どこから情報仕入れてんだよ…》

と思いながら、聞き耳を立てて聞いていた。

各部屋に必ず一人、情報通がいる。

斯く言う私も、叫んだ日がある。

子泣きじじいみたいな高齢の男性に、しつこく院内を追いかけ回された。

「こっち来ないでよ!!しつこい!!」

毎日叫んでた。

院内で私の姿が見えなくなると、探し出す。

隣の部屋から、女性達の叫び声がしていたので

《どうしたんだろう》と不思議に思っていると…

“アイツ” だった。

部屋はカーテンで仕切られている。

それを爺が激しく開けていく。叫ぶ女性達。

「何してんの!!?」と、私が叫ぶ。

爺黙る。安心した顔で。

…少しボケているのか、何か障害がある人なのか…よく分からなかったが、直接触ったり暴力をふるったりという危害を加える人ではなかった。

…にしても、コワイ。

私が違う病棟に移ることとなり、その後は知らない。

《ごめんなさい、コワイ思いさせて…》と、

女性達に申し訳ない気持ちでいっぱい。

しばらく、かなり落ち込んだ。

エピソードはまだまだある。

でも、ここらでやめておく。

精神科への入院って…

入院さえすれば、症状が落ち着くのかと思ってた。

いや、あれは…

“社会で危ないことをしそうな人が隔離されてる”のかな…と。

これは私の体験からの、偏見。

そうじゃない大人しい人も居たけれど。

繊細で、優しすぎる人とか。

でも…この人たちも。ここに居ないと、今すぐにでも “自分に” 危害を加えそうではあった。

―なんとも奇妙で、貴重な体験だった。

私のように、あの人たちも。

社会で、もがきながら今日も生きてるんだよな…と。

桜が舞う穏やかな空を見ると、

切ない気持ちと共に…思い出す――。

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