夢のような昔の話

「なによっ!?ちゃんと言ってよ!!!」

私はキレ散らかしていた。

16歳の子供が、強面な大人に向かって…

高校に進学したはいいものの、馴染めなかった。

『学校に行かないならバイトしなさい!』

母に言われた。

近所のコンビニで働かせてもらえた。

当時、時給650円。

バイト中。

《今で一時間ぐらいかな…》と時計を見ると、

まだ10分も経っていない。

絶望だった。

《…バカらしい…安すぎ。…まぁいっか。家に居てもうるせーし…》

バイトをしても、母は小言を言ってる。

《あー…無理。》

次の日。母が仕事に行っている間に、

買っておいたブリーチ剤で髪を染める。

…汚い金髪が出来上がった。

着の身着のまま、家を出た。

ボーっと。ダラーッと。歩いていた。

いつの間にか、すっかり陽も沈んでいた。

後ろからスーッと車が近づく。

【…家出~?】

ニヤニヤしたオジサン…お兄さん?

よく分からないが、なんか怖そう。

窓から出してる腕も太くて…強そう。

坊主頭に、サングラスを乗せている。

「……」

私は黙っていた。

【乗る?ドライブ連れて行くよ~】

パッと、後部座席のドアが開く。

《……暇だしな…》

私は乗った。

マクドナルドでチーズバーガーセットを買ってもらった。

なぜ私がこうしていたかを饒舌に話す。

そしてその時、自分の年齢を “今年19になる” とサバ読んでいた。

《大人の方が楽しいこと教えてもらえる…》

なんとなく、そう思っていた。

途中、チューハイも買ってくれた。

そのまま、その強面さんの家に泊めてもらうことに。

テレビと冷蔵庫しかない。

殺風景な部屋。

【どうぞ~】相変わらず、ニヤニヤしてる。

《ラッキー。何でも食べれて飲めて…ツイてるわ》

本気で、そう思っていた。

“ガチャッ”

一人で住んでいると言っていたのに、誰か入ってきた。

派手な見た目のお姉さんが3人。

《うわっ…めっちゃ綺麗……》

スタイルも抜群で、思わず見とれた。

強面さんが

【…ここは…まぁ、そういうことだから】と。

《???》

分からん。分からなかったが、

皆が微笑んでいたから、私も微笑んだ。

次の日から、綺麗なお姉さん達に

メイクをしてもらったり。

大人びた服を一緒に買いに行ったりした。

ヒールにミニスカ…初めてでドキドキした。

お金は何故か、強面さんが出してくれてるらしい。

《なんで?》と思ったが、なんとなく聞けない空気だった。

3日―4日と過ぎたころ。

【…お前は…よくそんなゴロゴロしてられんな…】

なんか怒ってる。

《なに?なに?》

分からない。

…そういえば、お姉さん達は電話が鳴ると、どこかへ出掛ける。

《どこに行ってるんだろう?》

不思議だった。

強面さんは、ずっと怒っている。

最初は怖かったけど。

《なんで怒られてんの?…私が何したよ…》

…だんだん、腹が立ってきた。

ゴロゴロしながら、私はチューハイを開けたばかり。

気が大きくなってきた。

「…あのー…何ですか?」

強面さんを睨む。

【…あーー!?なんよその態度はー…あー!?】

「うるさい!!…あなたさー。さっきから…ず~~っと何を言ってるの!?」

【あーーん!??】

怒ってる。

でも、ぜんぜん怖くない。

私は酔ってるし、何より急に理不尽に怒られて意味が分からない。

「私が何をした?なんで怒ってるの!!」

【…何をしたって……何もしないから怒ってんだろー!!】

《…はぁ?………話にならない。こんな話が通じない人初めてだわ…》

呆れ顔で、ため息をついた。

―強面さんの勢いが急に落ち着く。

【お前…分かってんだろ?分からんフリしてんだろ?】

「…何がーー!だから…説明して!!」

たじろぐ強面さん。

【………○女?…は?違うだろ?】

《ジョジョ……》

…意味が分からない。余計に腹が立ってきた。

険しい顔で怒ったまま、黙り込む私。

本当にこの頃、何も知らなかった。

後に理解したとき――

今すぐ消えてしまいたかった。

「なによっ!?ちゃんと言ってよ!!!」

―強面さんは、頭を抱えていた。

【ウソだろ……】

いつの間にか、私は寝てしまっていた。

次の日―

【出ていってくれ。頼む。】

そう言って追い出された。

思い返すと…

優しいんだか、何なんだか。

いや、何事もなくて良かったんだけど…

不思議すぎて。

この、ある意味 “夢のような体験” を…

いまだに処理できずにいる…。

コメント

タイトルとURLをコピーしました