あの夜のミルキー

ドッドッドッド……ブォー!!…ブォンッ…

―静かな夜に響き渡る。

多分、私を探す音…。

10代の頃。

とにかく家に居たくない。

監視され、ロボットのように操作され。

《…どっか遠いとこに行きたい……》

初めて電車に乗った。

20:00頃は、まだ人が多かった。

なんとなく、テレビの天気予報で聞いたことのあるちょっと遠い場所へ。

―駅に着く。

皆、足早に散って行く。

行く当てもなく出てきた私は、駅にポツンと。

《どうしよう……とりあえず、お守りの梅酒を…》

手のひらサイズの梅酒を飲む。

《んーーー!胸が焼けそう。気持ちいい…》

イッキ飲みし、パワーをつける。

とりあえず、歩いてみる…が。

思ったより、だいぶ田舎。

街灯も少なく、暗い。

《こわ…どうしよ…》

歩き進めると、灯りが見えた。コンビニ。

《あーー…良かった…》

安心して、大きく息を吸い込む。

そして小走りでコンビニへ向かう。

チューハイを3本。買ったはいいが…行き場がない。

《…帰りたい…》

泣きそうになりながら、コンビニの前にしゃがみ込んでチューハイをチビチビ飲む。

バッバッバッバッ……ブォーーーッ…

低い音が胸に響く。

《うるさいなぁ…てか、眩しい…》

2人乗りのバイクが近付いてくる。

若い兄ちゃんが2人。

ライトでこちらを照らしている。

「おー…何してんの?(笑)こんなとこでー」

『……』

「おーい。都会でしょ?都会から来たでしょ?見たことない。こんな人(笑) 」

「お姉さん系~っ!いや、ギャル?違うか…あっ。

マジで何してんの?てか何歳??俺ら19。」

ずっと、ヤンチャそうな兄ちゃんが喋ってる。

バイクを運転していた大人しそうなお兄さんを指差しながら

「コイツの家、来る?(笑)」

『…行かない。帰りたい。』

「喋った~!!(笑)」

2人でパーン!と、ハイタッチをしている。

「えーっとぉ……じゃあ、ちょっと待ってて。遊んであげる。どうせ電車っしょ?朝まで無いから。」

2人して、またバイクに跨がった。

「待っといてよ!!!」

ベチャーッとコンビニ前にしゃがみ込んだ私を置いて、去っていった。

《…なに?……また来んのかな…》

3本目のチューハイを開けようとしたとき。

“パッパパーーー!!!”

クラクションを鳴らしながら、車が近付いてきた。

「お待たせーっ!」

助手席の窓から顔を出したのは、

さっきのヤンチャな兄ちゃん。

「はいーっはい!乗って!!」

後ろに乗るよう親指を立てて促す。

私はフラつく足で、なんとか立ち上がり…

当たり前のように乗った。

「こんばんはっ!(笑)」

《すっごい元気…あー、ロンブーの敦に似てる…》

そんなことを思っていると、

【いいですか?発車しますよー】

運転席の大人しそうなお兄さんが初めて口を開く。

『あっ…はい。』

―ケータイを見ると、22:00を過ぎている。

車ではずっと、ヤンチャな兄ちゃんが喋ってる。

彼女の話、最近やった悪いこと、実は夢があること…

「…キリ無いから、コイツん家泊まろ?

大丈夫!コイツ大家族だから!何もしないから!

…あ、俺も泊まるから!!(笑)」

そのまま、運転手のお兄さんの家に向かう。

…が。

家に誰も居ないらしい。

【だった…親から電話きてたんだ…あーー、しまった…。あいつら…】

お兄さんを置いて、家族総出で出掛けてるらしい。

詳しくは分からないが、大量の着信履歴の残るケータイを手に、お兄さんが立ち尽くしていた。

「おいー!オレ出ろって言ったじゃん~」

ちょっと揉め出した。

《ヤバイ…私のせいかも…?》

そう思い、何故か

『あの、帰ります。ありがとう』

と残し、その場を去った。

「え、え、え、どゆこと!?え、え??」

声が聞こえるけど、なんか罪悪感がすごくて居られなかった。

《…こんなとこに来てまで迷惑……もう…ここら辺に座っとこ…》

チカチカと、今にも切れそうな電気の点いてる

“集会所” のような場所で朝まで待つことにした。

浅い階段に腰かける。

《さっきミルキー買ってて良かった…》

まだ24:00にもならない。

辺りはシーンとしていたが、不思議と怖くなかった。

少し湿った空気の中で、酔いが回って心地よい…

ふーっと、自然と目が閉じる…

《あ…寝れるかも……》眠りにつきかけた時。

……ドッドッド……ブォーン!!パッパーーー…

遠くから、“さっきの音” が。

立ち上がってみると、少し先の方が明るい。

《あー……仲直りしたかな…》

そんなことを思いながら、また座る。

階段に腰かけ、壁に寄りかかる。

――気が付くと。

ほんのり明るい。ケータイを開く。

《…5:00………あ、そっか、夜中に…。

で……えー…寝てたのか。すげーな…》

ボーッとしながら、しばらく考え込む。

《どうしよっかなー……電車…どっちだっけ…》

“ザッザッザッ…”

散歩中の人が三組くらい通った。

皆、こちらを見ないようにしている。

《ごめんなさいね……何もしませんので…》

服装は綺麗め。なのに…

若い女が早朝から…こんな所で

しゃがみ込んでる姿は “異様” だっただろう。

『すいません…駅…どこですか?』

とりあえず歩きながら、人に会ったら聞いてみた。

なんとか時間をかけて、駅に着く。

《あーっ……やっと帰れる…》

ブォンブォンブォンッ…ドッドッド…ブォーォ……

遠ざかるバイクの音。

《…ん?…………違うか。》

電車に乗り込み、

結局…あれほど嫌いな家に帰る。

「きったな!どこ行ってたのね!?あんた…目の下が黒いが!化粧落としなさい!……もう…風呂に入りなさい!」

さっそく、うるさい。

シャワーを浴びながら

《…あの兄ちゃん達…仲直りしたかなぁ…》

私の10代の頃の、謎行動――

相変わらず、危なっかしい。

でも…あの頃だから、出会えた時間。

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